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探偵百合子・最初の事件~魅裏怨劇場の怪~

1U2JymQTKKg:2018/10/20(土)22:49:29 ID:qcp()
TB第3弾「劇場ミステリ」が明後日からなので、投票期間中に書いた応援ドラマをば。

つむつむは出ないけど、百合子とまつり姫は出ます。
41U2JymQTKKg :2018/10/20(土)23:17:47 ID:qcp()
「まつりさんとこのみさんは当劇場が出来た頃からの看板女優でした。2人を見るために遠方から脚を運ばれる方もいました。特に二人劇「decided」は各方面から高い評価をいただきました」

「だったら。仲が良くてもいいのではないですか」

「そうはいきません。2人が2人でいたからこそ得た評価でしたが、ファンの中ではどちらがより優れていてより人気があるのかという論争が起き始めました。
 初めは徳川さんも馬場さんも気に留めていらっしゃらなかったのですが、時間が経つにつれ徐々に2人の関係にその論争が影を落とし始めまして」

 身体がやや前のめりになる。下り坂に差し掛かったようだ。

「その決着は付いたんですか」

「いえ、うやむやのまま年月だけが過ぎました。2人の大女優は“元”大女優となり、時々の摩擦はあれど大きな問題は起きませんでした。周防様と田中様が現れるまでは」
42U2JymQTKKg :2018/10/20(土)23:18:55 ID:qcp()
「琴葉さん、ですか?」

 桃子ちゃんは確かに生意気で、まつりさんの反感を買いそうなところはあったが、琴葉さんとなるとどういうことだろう。

「田中さんは徳川さんの、周防さんは馬場さんの肝入りなんです」

 ステージ上で琴葉さんを指導するまつりさんと、桃子ちゃんを守ろうとするこのみさんを思い出す。

「元々、馬場さんは後輩の育成に熱心でした。今までも中谷育、大神環といった女優を演劇界へ招き入れて育てた実績があります。
 中でも周防さんには大変目をかけていまして、中谷さんや大神さんに比べて長い期間面倒を見ています。
 彼女が子役スタアとして華々しい実績を上げているのは、馬場さんの功績が大きいと言われており、馬場さん自身もそれを誇りに思っています」

 車が大きく右に曲がる。
43U2JymQTKKg :2018/10/20(土)23:19:30 ID:qcp()
「一方の徳川さんは若手の手を取ることはなく、背中で引っ張っていくスタンスを取っていました。
 そんな徳川さんが連れてきたのが田中さんです。田中さんは元々学生演劇をやっていたのですが、たまたま徳川さんがコンテストの映像を見てスカウトしたそうです。
 以前から演技力に定評があったそうですが、徳川さんが指導を始めてからはメキメキと頭角をあらわしています」

「もしかして、桃子さんと琴葉さんは、このみさんとまつりさんの……」

 バックミラーに映る真壁さんの目が肯定を示す。

「今日見ていただいた劇ですが、主役であるヒロインは誰だと思いますか?」

「琴葉さんですか?」

「いえ、周防さんです。もちろん実力や適正で配役が振られたのですが、徳川さんは面白くなかったのでしょう。事あるごとに周防さんと馬場さんに突っかかるようになったのです」

 再び信号で車が停まった。
44U2JymQTKKg :2018/10/20(土)23:20:00 ID:qcp()
「それじゃあ、まつりさんには桃子さんの踏み台を壊す動機があるんですね。いや、その思いを琴葉さんも知っていたとすれば、琴葉さんも?」

 そういえばステージ上で桃子さんからキツく当たられていたっけ。私はぶつぶつ呟きつつ手帳をめくり、メモを増やしていく。

「七尾様」

「はい」

 私は顔を上げずに返事をする。

「到着致しました」
45U2JymQTKKg :2018/10/20(土)23:20:15 ID:qcp()
 パッと顔を上げるといつもの駅前だった。さっきまで知らない道を走っていたと思っていたのに。

 荷物の整理をしていると真壁さんがドアを開け、手を差し伸べてくれた。ヒンヤリとしてスベスベの手を取り車外へ出る。

「それではまたご連絡致します」

「はい!それまでには事件を解決してみせますので」

 私が勢いよく答えると、真壁さんが少したじろいだように見えた。

「……期待しております」

 真壁さんは目を細めて深々と頭を下げた。
46U2JymQTKKg :2018/10/20(土)23:21:29 ID:qcp()
「百合子さん、お待たせ……です。新メニューの“特製ビビットナイトプレート”、です」

 紅茶と一緒に可愛いうさぎのムースと剣のデコレーションが施されたチョコレートが目の前に置かれる。

「あ、この剣の模様ってもしかして……」

「えへへ、さすがです。百合子さんが、アバターに持たせてる、剣……だよ」

 お盆で顔を隠しながら答えるのは、ミリオンカフェの杏奈ちゃん。歳は一つ下だけどネットゲームでコンビを組んでいる親友だ。

「それじゃあ、いただきまーす」

 しっかりスマホで写真を撮ってから、ムースにフォークを入れる。するりと入ったフォークの後ろから赤いソースが現れた。ムースにソースを絡めて口へと運ぶと、口の中に甘酸っぱいイチゴが広がった。

「どう……かな?」

 この風味を口の外に出すのがもったいない。不安そうに見つめる杏奈ちゃんへ両手で丸を作って返事をする。
47U2JymQTKKg :2018/10/20(土)23:21:46 ID:qcp()
 あっという間にプレートを綺麗にすると、杏奈ちゃんがカップを持って目の前に座った。

「いいの?お店は」

「ん……。今はお客さんも少ないから、大丈夫。静香ねえにも許可、とった」

 杏奈ちゃんが私のカップに紅茶を継ぎ足してくれた。

「それ……学校の宿題、じゃないよね?」

 私が机の上に広げていた手帳を指差した。

「うん、実はね」

 先日、ホームページに依頼があったこと、そして実際に現場へ行ったことを話した。

「すごい……本当の探偵、みたい」

「ううん、まだ謎が解けてないもの。事件が解決しないと探偵にはなれないよ」

 そう言いつつもきっと私の顔はにやけているだろう。
48U2JymQTKKg :2018/10/20(土)23:22:14 ID:qcp()
「それで、謎、解けそう……なの?」

「……全然」

 真壁さんに啖呵を切った時はなんとかなりそうな気がしたんだけど、あれから全く進んでいない。真壁さんから連絡が来ていないのが救いだ。

「他の人の意見も、聞いてみたら?得意そうな人、いないの」

「得意そうな人、ねぇ……」

 クラスメイトを頭に浮かべる。昴さんはこういう作業は得意じゃないだろうし、ロコちゃんは……うん、発想だけは良さそうな気がする。
 美希さんはやる気さえ出してくれれば、なんとかなりそう。朋花さんなら得意そうだけど、やっぱり本命は伊織さんかなぁ?

「あ、杏奈、いい人……思いついた」
49U2JymQTKKg :2018/10/20(土)23:36:38 ID:qcp()
「いい人?杏奈ちゃんの友達だと、まず未来と翼は違うでしょ。ひなたちゃんや可奈ちゃんややよいさんもピンと来ないし。もしかして、志保?」

「ううん、杏奈の友達、じゃなくて。百合子さんの知り合い。頭が良い人、いるよ」

「私の?……もしかして」

「そう、紗代子、さん」

 私は大きく手と首を振った。

「ダメだよ!紗代子さんにこのことを言ったら絶対に怒られるもん!」

「私がどうかした?」
50U2JymQTKKg :2018/10/20(土)23:37:31 ID:qcp()
 突然の声に振り向くと話題に出したばかりの人物がそこに立っていた。

「杏奈ちゃん、コーヒーをお願いしていい?あと、たい焼きね」

 紗代子さんは杏奈ちゃんと入れ替わるように私の正面に座った。

「それで何かあったの?」

「いや、その……」

 正直に言ってしまいたいが、ここで白状すれば、怪しいメールにホイホイ釣られて知らない人について行ったことを怒られる。それだけじゃなく、心配だから次から私も付いて行くと言いかねない。いや、間違いなく言う。

「その……百合子、さん、新しい推理ゲームにはまってて。それで、謎が解けないって」

 杏奈ちゃんがコーヒーと一緒に助け船を出してくれた。

「ああ、それで私に怒られるって言ってたの?もう、ゲームにはまったぐらいじゃ私は怒らないのに……」

 頬を膨らませながら紗代子さんはコーヒーをすすった。

「それでどんな謎なの?」
51U2JymQTKKg :2018/10/20(土)23:38:01 ID:qcp()
 私は手帳を見せながら事件の概要を説明する。紗代子さんの前にたい焼きが置かれた。

「なるほどね……」

「みんなにアリバイがあるならまだしも、3人とも犯人になれる状態なんです」

 紗代子さんがたい焼きの尻尾にかじりつく。

「ねぇ、本当に3人かな」

「どういうことですか?」

「踏み台を壊された人、えっと桃子ちゃんだっけ?桃子ちゃんの自作自演ってことはないの」

 私は目を丸くして紗代子さんを見つめた。
52U2JymQTKKg :2018/10/20(土)23:38:27 ID:qcp()
「だって、桃子ちゃんが控え室に入った時、みんな劇場にいたんでしょ?だったら、桃子ちゃんが到着したことは誰も知らないんじゃない?」

「いえ、そんなことはないです。だって、桃子ちゃんは控え室に踏み台を置いたあと、客席で真壁さんと一緒に……」

「うん。客席にいたんだよね」

 そうだ、明るいステージから暗い客席を見ても誰がいるかなんて分からない。それは私も経験した。でも……。

「でも、桃子ちゃんはあの踏み台を大事にしていて」

「それは本当なの?だって、桃子ちゃんはスタアなんでしょ?演技のプロだよ」

 紗代子さんの反論に何も言い返せない。桃子ちゃんの言動全てが演技だったというのか。いや、でも……。
53U2JymQTKKg :2018/10/20(土)23:38:41 ID:qcp()
 ニャンニャン!ウーニャンニャン!

 ごちゃごちゃした頭をかき回すように変な声が聞こえてきた。

「な、何、今の!?」

 紗代子さんも驚いている。2人してキョロキョロするが声がどこから聞こえてきたかは分からない。

 ニャンニャン!ウーニャンニャン!

 もう一度聞こえてきた。足元だ。机の下を覗き込むと茜色の毛をした可愛い猫がこちらを見ていた。
54U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:10:14 ID:xXA()
「あ、ごめんなさい……。アカネチャンが、ビックリさせちゃって」

「アカネチャン?……ああ、この猫、アカネチャンって言うんだね」

 紗代子さんがアカネチャンに手を差し出すと、アカネチャンは頭を擦り付けた。

「最近、カフェに勝手に入ってくる、の。ほら、あそこ、歌織ねえがドアに専用の入り口、作った」

「もしかして、私が来た時からいたの?」

「ううん、ついさっき、だよ。杏奈、入って来るところ……見た、から」

 そっか、私はドアを背にしていたから分からなかったのか。あれ、でも……。

「私は全然気づかなかったけどなぁ。どうしてだろう」

 そうなのだ。紗代子さんは入り口が見える位置に座っていた。アカネチャンが入って来たなら気付きそうだけど。
55U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:10:40 ID:xXA()
「それは、ね、紗代子さん、もう一度……座って、みて」

 杏奈ちゃんに促されて紗代子さんは席に座り直す。

「あ、そういうことか、確かに分からなくてもしょうがないね」

 紗代子さんは膝に飛び乗ってきたアカネチャンをなでなでしている。

「……百合子、さん。どうかしたの?ぼーっと、してる」

 杏奈ちゃんが私の前で手を振った。

「うん。どうかしたよ」

 私は席に着いたまま、ぼそりと呟いた。

「分かったの、誰が踏み台を壊したか」
56U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:17:25 ID:xXA()
「探偵さん、犯人が分かったというのは本当なのです?」

 劇場のステージ上、まつりさんが頬に人差し指を当てて確認する。

「はい。間違いありません」

「なら、教えてちょうだい。一体誰が桃子ちゃんの踏み台を真っ二つにしたのか」

 このみさんが腰に手を当て声を上げる。

「分かりました。ひとつずつ確認していきましょう」

 私は手帳を開く。
57U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:18:40 ID:xXA()
 私は手帳を開く。

「まず、今回の事件は桃子さんが急用で稽古に遅れたところから始まります」

「それ、関係あるの?」

「はい。むしろ、とても重要なファクターです」

 桃子ちゃんをまっすぐ見て返答する。

「桃子さんが遅れたことで皆さんは桃子さんがいないシーンの稽古を始めました。そして10時半に桃子さんが到着した」

 桃子ちゃんがコクリと頷く。

「踏み台を控え室に置くと桃子さんは客席へと移動します。そして真壁さんの隣に座り、他の方の稽古を見学していた。その間、このみさん、まつりさん、琴葉さんの順でステージを離れ、11時に桃子さんが控え室に戻った時には踏み台が壊れていた」
58U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:18:52 ID:xXA()
「そのとおりですけど、これで犯人が分かるんですか?」

 訝しげな目で見る琴葉さんに私は大きく頷いた。

「ここで気をつける点は、いつ踏み台が壊されたのか、です」

「それは、10時半から11時の間でしょ?」

「そのとおりです。しかし、この時間に桃子さんの控え室に踏み台があったことを知ることができた人は何人いるでしょう?」

「何人って、それはここにいる全員なのです?桃子ちゃんがいつも踏みを持ってきていることはみーんな知っているのです」
59U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:19:09 ID:xXA()
「いえ、違います!稽古をしていた私たちは知りませんでした。だって、桃子さんが劇場にいることを知ったのは、桃子さんの叫び声を聞いた時です!」

 琴葉さんの発言に皆があっと息を飲む。

「そうです。観客席は暗くステージは明るいため、稽古をしていた皆さんは観客席に桃子さんがいることはもちろん、桃子さんが到着していることすら分からなかったんです」

「それじゃあ、踏み台を壊したのって……」
 
 桃子ちゃんがみんなの視線に気づく。
60U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:35:38 ID:xXA()
「桃子ちゃんが劇場に来たことに瑞希ちゃんが気付いたのも桃子ちゃんが隣に座ったから。つまり瑞希ちゃんも踏み台を壊せなかったってことなのです」

「ちょ、ちょっと待ってよ!?なんで桃子が大事な踏み台を自分で壊さないといけないの」

「でも、壊しても修理が効くものなんですよね。確かそろそろ届くって……」

 桃子ちゃんが一歩また一歩と後ずさりする。

「違う、違うんだから!桃子じゃない!探偵さん、何か言ってよ」
61U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:36:01 ID:xXA()
「ええ、桃子さんの言うとおり、犯人は桃子さんではありません」

 再び私に皆の視線が集まる。

「今回の事件が桃子さんの自作自演だとすると、桃子さんがステージではなく客席に行ったことが分からなくなります」

「そっか、ステージに行けば少なくともみんなに自分の存在を知ってもらえるものね」

「はい。しかもわざわざ真壁さんの隣に座っています。これでは真壁さんのアリバイを自分で証明することになってしまう。自作自演を隠したいのであれば明らかに不自然な行動です。よって桃子さんの自作自演説は違うと考えられます」

 桃子ちゃんは明らかにホッとした顔をしたが、すぐに表情を引き締めた。

「じゃあ、なんで桃子が来たことを誰も知ることができないなんてこと確認したの!?」

「それは、桃子さんが来たことを知らない限り犯行に及べない、つまり、桃子さんの到着を知ることができた人こそが犯人であることを皆さんに知ってもらうためです。そして、たった1人、桃子さんの到着を知ることが出来た人がいます」

 私は手帳をパタリと閉じた。
62U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:42:00 ID:xXA()
「犯人にとっても偶然が重なった結果でした。お見せしましょう。桃子さんが控え室に踏み台を置き、観客席へ向かう時に何が起きたのかを」

 私は手を高く掲げ指をパチンと鳴らした。

「これって……」

 木の軋む音が劇場内に響く。

「そう、桃子さんが控室を出た時、ステージではちょうど舞台背景が回転しているときでした。そうですよね、桃子さん」

 桃子ちゃんがおずおずと頷く。それを確認して、私はもう一度指を鳴らした。舞台背景の回転が止まる。

「見てください、これが犯人の見た光景です」

 私は舞台背景を指差す。そこでは描かれていた暖炉が舞台袖を向き、その前に人が1人悠々と通過できる空間が出来ている。
63U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:42:14 ID:xXA()
「あのー、探偵さん、これがどうかしたんですか?ただ控え室前の通路とステージが繋がっただけですよね」

 琴葉さんが笑っていない目で聞いてくる。

「琴葉ちゃんの言うとおりなのです。まさか犯人はここを移動したとでも言うのです?これで分かるとは到底思えないのです」

 まつりさんが後を追って言葉をつなぐ。

「誰か1人だけ桃子ちゃんが控え室を出たこと分かったって話だったのに……。確かに控え室のドアが少し見えるけど、でも、ステージにいたみんなが分かっちゃうわよ」

 このみさんが腰に手を当てて口を挟む。
64U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:42:43 ID:xXA()
「……やはり気付いていなかったんですね」

「気付いていないって……。探偵さん、桃子もさっきみんなが言ったとおりだと思うけど」

「桃子さんはそうだと思います。でも、今の話を聞いておかしな点がありましたよね。まつりさん、琴葉さん」

 驚きの表情が貼りついている2人に話を向けると、琴葉さんの口がゆっくり動いた。

「はい……。だって、ここから控え室のドアは見えないです」

「どうして!?ほら、よく見てよ!ここから通路の足元照明とドアの下の部分……が……」

 舞台背景の向こう側を見返していた桃子ちゃんの手がダラリと落ちた。

「そうなんです。確かに舞台背景の裏側に桃子さんの控え室はあります。だから、舞台背景がずれて空間ができ、桃子さんの控え室のドアが少しだけ見えるんです」

 私は回転した舞台背景が作った隙間の前に移動して、ポケットからスマホを取り出した。

「でも、それは桃子さんだから。まつりさんや琴葉さんには今の状態では控え室が全く見えません。なぜなら……」
65U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:43:04 ID:xXA()
 私はスマホのライトを点け、隙間の奥を照らし出した。

「まつりさんが置いた大きなウミウシのぬいぐるみが視界を塞いでいるからです」

 青いまだら柄の大きなぬいぐるみに白いライトが当たる。 
 私はライトを少しだけ下げた。

「桃子さんが控え室のドアを見ることが出来たのは、そのぬいぐるみの下に隙間が空いていたから。そう、他の人より背の低い桃子ちゃんだからこそ見えたんです」

 そう、カフェの厨房にいた杏奈ちゃんからなら見えたアカネチャンの入ってくる姿が、客席に座っていた紗代子さんからは机が邪魔で見えなかったように。

 スマホのライトを消し、ポケットに戻す。

「ここから控え室のドアを確認できた桃子さんだけではありません。先ほど自分から話してくださいましたから」

 私はくるりと振り向き、彼女に向けて人差し指をまっすぐ伸ばした。
66U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:43:13 ID:xXA()
「ステージに立ちつつ、それでいて桃子ちゃんが来ていたことを確認できた唯一の人物、それは馬場このみさん、あなたです」
67U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:43:58 ID:xXA()
 指先の向こうのこのみさんは驚いた表情も見せず、ただこちらを黙って見つめていた。もちろんその目は笑っていない。私は指を下げず、このみさんの口が動くのを待った。

 しばらくしてこのみさんは、フッと笑って目を伏せた。

「……悪いことはするものじゃないわね」

「このみちゃん?」

「ええ、桃子ちゃんの踏み台を壊したのは私よ」

「そんな……どうして」

 桃子ちゃんが顔を白くしながらふらふらとこのみさんの元へ近づく。

「どうして!?こんなに桃子のこと可愛がってくれているでしょ!どうして、私の大事な踏み台を……どうして……」

 肩を揺する桃子ちゃんの手をこのみさんが強く握り締めた。

「逆に聞きたいのはこっちよ。どうして分からないの?背が低い人の気持ちが!」

 このみさんが桃子ちゃんの手を引き剥がすように払った。
68U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:44:23 ID:xXA()
「みんな私を置いて大きくなっていた。育ちゃんも環ちゃんも……。きっと桃子ちゃんもそう。でも、今、踏み台を使ってまで大きく見せる必要はあるの!?」

 このみさんの独白が劇場に響く。

「ずっと我慢してた。桃子ちゃんが踏み台を持ってきた時から。初めは良かった。むしろ微笑ましいぐらいだった。でも、少しずつ、桃子ちゃんの身長が大きくなって、目の下にあったはずの頭が目と同じ高さになって」

 桃子ちゃんが胸の前でギュッと拳を握った。

「でも、あの日、桃子ちゃんが私の前で、私に向かって踏み台を使ったあの日!冗談だって分かってた。でも、もう限界だった。だから、決めたの。踏み台を壊してやろうって」

 このみさんは首をゆらりと動かして、桃子ちゃんを見た。

「明日、修理されて戻ってくるのよね、踏み台。でも、ごめんね。きっと私、また壊すと思う」

 その目から一筋の涙が落ち、乾いたステージに飲み込まれる。

 桃子ちゃんが一歩、また一歩とあとずさり、その場でへたり込んだ。呆然とこのみさんを見上げるその目には次々と涙があふれてくる。
69U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:45:13 ID:xXA()
「このみちゃん、言いたいことはそれで全部なのです?」

 低く響くこのみさんの嗚咽を踏み締めるような足取りでまつりさんがこのみさんに近づく。このみさんは呆然とした顔でまつりさんを見上げる。

「これで全部かと聞いているのです」

 涙を拭くことなく、このみさんはゆっくりと頷く。それを見たまつりさんは小さく息を吐いた。

「まったく……。ダイコンさんはおでんのお鍋に入っているのです。ここはステージなのですよ?」
70U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:45:40 ID:xXA()
「お、おでん……?」

 2人に割って入ろうとした琴葉さんが聞き返す。

「ほ?琴葉ちゃんはおでんを知らないのです?とってもわんだほー!なお鍋なのですよ。特にお味噌をつけると」

「いえ、おでんは知っています。聞きたいのはどうして今その話をしたかであって」

「……どうやら、琴葉ちゃんにはまだまだ教えなければいけないことがあるみたいだね」

 まつりさんはこのみさんに向き直る。

「このみちゃん、演技はそれくらいにしてホントのことを言って」
71U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:45:53 ID:xXA()
「えん……ぎ……」

 桃子ちゃんがこのみさんを仰ぎ見る。このみさんは口を強く結んで首を激しく振った。

「……っ!演技なんかじゃないわ。私の本心よ!なんでそんな言いがかり……。証拠はあるの!?」

「ほ?そんなものは必要ないのです」

 まつりさんは人差し指を頬に当てるいつもの仕草を取り、

「大女優の姫が下手な演技を見抜けないわけがないのです。ね?」

 と、にっこり微笑んだ。
72U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:46:13 ID:xXA()
「このみさん、私もまつりさんと同じ考えです。今の話は作り話だと思います」

 私は桃子ちゃんの冷たい腕をとって立ち上がらせた。

「このみさんが身長にコンプレックスを持っていても不思議ではありません。でも、それを桃子さんの踏み台を壊した理由とするには無理があります。
だって、すでにこのみさんは中谷さんと大神さんを一流の女優に育てあげているのですから。大きくなるのを恐れているのに桃子さんを育てるというのは矛盾があります」

 チラリと桃子ちゃんを見た。

「それに、桃子さんはこのみさんが大事なことを沢山のことを教えてくれたと言っていました。とても嬉しそうに。怨みを持ちながら教えられたとは到底思えません」

 桃子ちゃんがすがるような目付きでこのみさんを無言で問い詰める。このみさんは目をそらしたまま、何も答えない。
73U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:46:44 ID:xXA()
「七尾様、私からもよろしいでしょうか」

 ステージ脇で舞台背景の操作を手伝ってくれていた真壁さんが姿を現した。私は小さく頷く。

「ありがとうございます。馬場様、今から話しますのはあくまで私の想像でございます。御承知おきください」

 このみさんは答えない。真壁さんはそれではと断って話し始めた。

「馬場様、あなた様はもしかして周防様を独り立ちさせようとなさったのではないですか」

「桃子さんを……?」

 琴葉さんの問いかけに真壁さんはこくりと頷く。
74U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:47:46 ID:xXA()
「馬場様は今まで中谷様と大神様を育て上げられました。お二方とも世間を賑わす女優となっております。ただ、世間に知られるまでは馬場様と常にいらっしゃる状態でした。今の周防様と同じでございます」

 真壁さんは目を閉じて、懐かしむようにして言葉を紡いだ。

「馬場様の熱心な指導を受け、演劇の才能を開花させたお二方は徐々に単独の仕事が増えるようになってきます。舞台のお仕事だけではなくドラマや映画のお仕事、TV番組への出演もございました。
そのような状態が続くと自然とお二方は馬場様とこの劇場から離れていきました。まるで小鳥が親鳥の元から巣立つように。それは徳川様も御存じのことと思います」

 まつりさんが懐かしそうに頷く。真壁さんは桃子ちゃんの方へ顔を向けた。

「周防様。既にあなた様は多くの仕事をお持ちです。ドラマへの出演も多く、映画にも出ていらっしゃいます。ただ、頻繁に当劇場での舞台に立ち、馬場様の元へ足をお運びになられます。きっと馬場様はそれを気になさっているのではないでしょうか」

 真壁さんの言葉に桃子ちゃんはこのみさんの方へゆっくりと振り返った。
75U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:48:03 ID:xXA()
「周防様は大人と対等に向き合うために踏み台を使っているということでした。独り立ちをなかなかしない周防様を気にした馬場様の目には踏み台こそが周防様が独り立ちできない原因に思われたのかもしれません」

 人は二本の足を地面につけて立つ。踏み台は地面と足との間を遮るもの。踏み台を使う限り、自らの足で立っているとは言えない。

「このみさん……そうなの?」

 桃子ちゃんがか細い声でこのみさんに投げかける。

「そうなら……ちゃんと言ってよ、桃子、このみさんの言うことならちゃんと聞くのに」

「……だからよ」

 このみさんがようやく口を開く。
76U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:48:37 ID:xXA()
「他の大人には踏み台がないと向き合えないのに、こうやって私には素直で従順で……。そんなの心配になるに決まっているでしょ」

「もしかして、踏み台を壊したこと」

「ええ、いずれは私の口から話すつもりだったわ。私と、訣別させるためにね」

 このみさんは枯れ切った涙を手で拭った。

「探偵さん、ホント、余計なことをしてくれたわね。これじゃあ、桃子ちゃんが独り立ちできないじゃない」

「そんなことありません!」

 突然の大声に皆が声の主、琴葉さんの方を振り向いた。

「余計なことなんかじゃありません。このみさんの気持ちが分からないまま無理やり独り立ちさせられたら、きっと桃子さんはこの世界から足を洗うことになっていたと思います」

 琴葉さんが自らの手を胸の前に持ってきてギュッと握る。

「だって、私ならそうだから……」
77U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:48:47 ID:xXA()
 琴葉さんの視線に気付いたまつりさんがそっと目を伏せる。気付けば桃子ちゃんがこのみさんの側へ来ていた。それに気づいたこのみさんはまた目をそらしたが、桃子ちゃんは気にすることなくこのみさんの右手を両手でギュッと握った。
78U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:48:56 ID:xXA()
「七尾様、ありがとうございました」

 隣に来た真壁さんがそっと耳打ちする。

「いえ、そんな……。私はただ、悲しい思いをする人を減らしたかっただけですから」

 私は胸を張って、そう答えた。

「……やはり、あなたに頼んで正解でした」

 真壁さんがにこりと微笑んだ。

 私は初めて真壁さんが笑うところ見た。
79U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:49:57 ID:xXA()
「おー、それじゃあ、百合子さん。事件を解決、したんだね」

 いつものミリオンカフェのいつもの席で杏奈ちゃんが紅茶を出してくれた。

「もちろん!だって、探偵の仕事は事件を解決することだからね」

「それじゃあ、杏奈も、何か依頼してみよう、かな……」

「ご依頼は七尾百合子探偵事務所ホームページのメールアドレスまでお願いします。今なら特別価格でサービスいたします」

 私はケーキセットのフォークをタクトのようにクルリと回す。

「事件解決のヒントを、あげたのに?」

「うっ、そう言われると……。まぁ、もともとお代は取るつもりなかったけどね」

 ホワイトムースにさくりとフォークを刺し、口へと運ぶ。
80U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:50:19 ID:xXA()
「それで、どうなったの。桃子ちゃんとこのみさんは」

「元の関係に戻れたんじゃないかな。帰るときに2人からありがとうって言ってもらえたし」

「戻れたんじゃないかなって、事件の後、劇場には行ってないの?だって、舞台の前、だったんでしょ。チケットぐらい貰ったんじゃ」

 ティーカップを持った杏奈ちゃんが当然の疑問を投げかける。

 そう、実はあれ以来、私は劇場に足を運んでいない。正確に言えば、足を運ぶことができなかった、のだ。

 これまで劇場へは真壁さんの運転する車で移動していた。移動時間自体は30分もなかったから、場所も近くだとは思う。ただ、どうやっても道を思い出せないのだ。

「まぁ、そのうちメールで連絡が来ると思うから、たゆたうコーヒーの湯気を吸いながら気長に待つとするよ」

「……百合子さん、コーヒー、飲めたっけ?」

「細かいことはいいの!」

 ちょっとだけぬるくなった紅茶に口を付けて、ムースを口に頬張った。
81U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:51:09 ID:xXA()
 入口のベルが鳴った。反射的に杏奈ちゃんが立ち上がり、いらっしゃいませと声を出す。ようやく私の待ち人が来たようだ。

「待たせちゃって、ごめん。杏奈ちゃん、いつものお願いしていいかな」

 たい焼きですね、と言って杏奈ちゃんが厨房へと姿を消し、代わりに紗代子さんが私の正面に座った。

「それでどうしたんですか。紗代子さんが私にお願いって珍しいですよね」

「うん、自分だけで考えてたら詰まっちゃって。ほら、百合子って作戦を練ったりするの、好きでしょ?」

「作戦……ですか?」

 そうなの、と言って紗代子さんはバッグからぼろぼろのノートを取り出した。ノートの色々なページから付箋が飛び出しているのが見える。

「私の所属している超ビーチバレー部なんだけど、今度キングロコと戦うことになったの」

「誰ですか、そのふざけた名前の人は」

「う~ん、まぁ、超ビーチバレー界のトップと思ってもらって構わないよ。それで、キングロコと私が戦うことになったんだけど」

「もしかして、その作戦を考えてくれってことですか?」

 紗代子さんは力強くまっすぐ私の目を見て頷いた。

「いや、無理ですよ!私、スポーツ苦手ですし、超ビーチバレーって言われても」
82U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:51:44 ID:xXA()
「大丈夫、だよ。百合子さんなら。だって、探偵なんだもの。ね?」

 紗代子さんの前にコーヒーを置く杏奈ちゃんがにこりと笑う。

「探偵……?ああ、この前、言っていたゲームのこと」

「ううん。百合子、さん、自分のホームページ持ってるの。ほら、これ。七尾百合子探偵事務所」

「……百合子、まさか危ないことやっていないよね」

 眼鏡の奥がきらりと光る。私は大慌てで首と手を振る。

「大丈夫……。こんなホームページ、まともに依頼する人なんて、いない」

 反論の言葉を紅茶で流し込む。我慢だ、百合子。杏奈ちゃんは味方だ。

「それもそうね。マグロ漁船だなんて普通の人は持ってないもの。でも、結構面白そうなページだね。時々見にこようかな」

「あ……ここの、アドレスにメールを送ると、百合子さんに、依頼、できるよ」

「ふふ、それじゃあ、ここにメールを送ってしまえば百合子も断れないよね?」

 味方から背中をバッサリと斬られた。超ビーチバレーか……。まずルールを覚えないとなぁ。というか、超ってなんだろう。
83U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:52:00 ID:xXA()
「あれ?」

「どう、したの。紗代子……さん」

「いや、メールが送れなくて。百合子、このアドレスで合ってるよね?」

「え、ちょっと見せてください。……あ、スペルが間違ってる。"ohage"じゃなくて"ohagi"です」

「もう、しっかりしてよ~」

 紗代子さんはたい焼きをかじるとスマホに向き直り、操作を再開した
 あとで修正しないと、と思いながら、ムースの最後のひとかけに手を伸ばそうとした時、杏奈ちゃんが私の腕を突っついて声を潜めた。
84U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:52:25 ID:xXA()
「あのホームページの、アドレスって……最後に書き換えたの、いつ?」

「えーっと、一回も書き換えてないけど。どうして」

 杏奈ちゃんの顔が徐々に青くなる。具合が悪いのかなと思い、声をかけようとした時、私のスマホがぶるりと震えた。真壁さんからだ。

「杏奈ちゃん、真壁さんからメールが来たよ!きっと舞台へのお誘いじゃないかな」

 私の問いに杏奈ちゃんは口をパクパクさせたまま、激しく首を横に振った。

「よしっ、と。百合子、今、メール送ったよ。初めての依頼、よろしくお願いね、探偵さん」

 ……初めての依頼?そっか、紗代子さんはこれが初めての依頼だと思ってるんだ。無理もないメールアドレスは今まで間違えていたんだから、依頼が来たなんて思わないだろう。

 ……ん?
85U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:52:39 ID:xXA()
 私はここでようやく杏奈ちゃんの様子がおかしかった理由に気付いた。

 真壁さんからはいつもメールで連絡が来ていた。

 あのメールアドレスはホームページにしか載せていない。

 そして、ホームページに書いたメールアドレスは間違っていた。

 以上から導き出されるのは……。

「百合子、メール届いた?」

 思い返せば、道を思い出せないこと以外にも不思議なことはたくさんあった。
86U2JymQTKKg :2018/10/21(日)00:52:54 ID:xXA()
 元・大女優と呼ばれているのに、名前を聞いたこともなかったこのみさんとまつりさん。

 TVでも活躍しているというのに見たこともなかった桃子ちゃんと、このみさんの教え子の中谷さんと大神さん。

 そして、支配人と演者以外誰もいない、本来ならいるべき監督も演出家も脚本家もいない舞台。
 
 私はスマホに目をやる。

 さっき来たメールの差出人は真壁瑞希となっている。

 私は自分の手を見て、真壁さんのすべすべでひんやりとした手の感触を思い出す。

「百合子?」

 紗代子さんの言葉が耳を通り抜ける。
87U2JymQTKKg :2018/10/21(日)01:10:13 ID:xXA()
 夢ではないはずだ。
 
 確かに私は桃子ちゃんの控え室で冷や汗をかき、大控え室で敬愛すべき名探偵に助けられ、ステージの上で推理を披露した。あの失望と感激と興奮は今もありありと思い出せる。

 じゃあ、今目の前にある謎は一体?

 それを確かめるにはこのメールを開くしかない。

 私はふと窓の外に目をやった。

 冬の陽射しを浴びた花壇の花に、季節外れの1羽の蝶が七色の羽根を優雅に使ってひらひらと舞っていた。
88U2JymQTKKg :2018/10/21(日)01:13:49 ID:xXA()
以上となります。ミスをしてしまい申し訳ないです。

猫茜ちゃんとキングロコを入れたのは趣味です。

ちなみに回転装置の件については漫画「Q.E.D」から着想を得ています。

それではSS完結報告スレにあげてきます。
89NdBxVzEDf6 :2018/10/21(日)01:18:48 ID:Ofc
最後怖いよ......
乙です

>>2
七尾百合子






>>3
真壁瑞希






>>11
田中琴葉






>>12
徳川まつり





90NdBxVzEDf6 :2018/10/21(日)01:18:59 ID:Ofc
馬場このみ






周防桃子






>>46
望月杏奈






>>50
高山紗代子






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探偵百合子・最初の事件~魅裏怨劇場の怪~
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